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2008.11.19

上海のヤキソバ

上海に帰ると、いつも近所の屋台にヤキソバを食べに行きます。

美食談義というのはなかなかつきないものでして、上海蟹がうまいとか、フカヒレが美味いとか、アワビが美味いとか、ある種の山海の珍味系の話とか、超高級品(神戸牛とか高級魚とかの類ですな)とか、有機だの無化調とか、色々言われますけど、珍味のたぐいはたまにしか食べないから美味いと思うわけで、毎日食べるようなものではないです。珍味の類を毎日食べている人は大体(私の知る限り)は病気になったり早死にしたりしています。超高級品というのも毎日食べるものではないですね。毎日神戸牛なんか食べてたら間違いなしに肥満か糖尿になります。有機とか無化調というのは理屈の上ではわかるんですけど、理屈倒れ的なところが多いように思います。どちらかといえばちょっと宗教っぽい。日本では信教の自由が保障されていますから、それでいいんですけれど。

私の考える「美味しいもの」は、「口に入れて美味しいと思えるもの」です。あたりまえやんか!と怒られそうですが、やっぱりこれが重要だと思うのです。そして「毎日でも食べられるもの」。これも重要ですね。1度食べたら美味しいと思った。でも何度も食べたら飽きちゃった・・・そういうものってよくあることです。去年台湾の友人からカラスミをたくさんもらったんですけど、丸々1個食べ終わる前に厭きました。珍味はあくまで珍味です。珍しいうちが華なのです。

私がこれは美味しいと思うものの1つが上の写真のヤキソバですね。もう何十年鍋振ってるのかわからんようなおばちゃんが、なれた手つきで、ほいほいっと肩の力抜いて作ってくれます。目の前で化学調味料たっぷり、こしょうたっぷり入れてくれますけど、これってものすごく美味しいんです。化学調味料は身体に悪いってよくいわれます。香港ではハゲた女性がたまにいるんですけど、香港人に言わせると、「小さい時にたくさん化学調味料を食べるとああなる」そうです。たぶん香港人の言う事なので半分以上ははったりだと思いますけど。

で、写真のヤキソバの話に戻りますけど、これってソースヤキソバじゃないんです。麺にまとわりついているのは醤油です。たくさん油いれて、具材と麺をええかんじでまぜこぜして、火が通ったら、鍋肌に遠慮無しに中国醤油を流し込んで、醤油が油と混じって、それがまたええかんじで麺にまとわり付いて、こんな感じになるんです。はっきり言ってジャンクな食べ物です。でもジャンクな食べ物はダイレクトに味覚に訴えてきます。でもそんなに油ギトギトでもないですから、別に毎日食べても身体は壊しません。1日3食全部このヤキソバだとどうなるかはわかりませんけど、とにかく毎日1食づつくらいなら、なかなか飽きの来ない味です。

上海に戻って夜になると、近所のコンビニで缶ビールを買って、この屋台に駆け込みます。おばちゃんは「いらっしゃい!」とか大声で叫びません。気が抜けているというよりも、一種の植物のような感じ(イメージ的には柳みたいである)で屋台にたっております。全然気合とか入れないで、ちゃちゃっと鍋振って終わりなんですけど、なんかその格好がすっごくいい。作っている時から、もうすでに「食べる」ことは始まっています。鍋肌でこげる醤油の香りが漂ってくると、「ああ、オレは今生きていぜ!」と絶叫したくなります。もう上海なんか帰りたくないなぁ・・・と思ったりすることもあるのですが、このヤキソバがありますから、色々面倒なことがあったとしても、まぁええじゃないかと、前向きに忘れてしまえるのです。

上海口福案内

著者/訳者:長塚 奈央

出版社:六耀社( 2004-11 )

定価:¥ 1,575

Amazon価格:¥ 1,575

単行本 ( 157 ページ )


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