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2009.02.21

柿と白ワイン(食べ物の思い出は弱い心を支える)

去年の暮れのことなのだが、たまたまうちの冷蔵庫には柿が山ほど入っていた時期があり、これが邪魔で他の物が入らないほどで難儀した。

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仕方ないので毎日毎日夜になると柿を一つづつ食べた。口福の日々であった。

前にまとめて5ケースくらい購入した白ワインがずっと残っていたので、それを開けて柿をつまみにして飲んだ。

よく冷えた少しドライな白ワインに柿。この組み合わせは絶妙である。

2008年の11月~12月というのは、数ヶ月前のことなのに、振り返ってみると毎日何をやっていたのかよくわからない混沌の日々であった。既に遠い記憶の彼方である。過ぎ去りし歳月というのは、それが1ヶ月前のことでも、10年前のことでも、結局は同じ事でいずれとも取り返すことは出来ない。取り返せないものの過去は思い出すことができるわけだが、2008年11月~12月を振り返って思い浮かぶのは柿と白ワインのことだけだ。またお前は食い物のことか、という声が聞こえてきそうな気もするが、その通りである。

思い出すことも、思い出されることも、全て嫌に成ってしまう時がある。思い出というのはやっかいな重荷で、ただ人の心を弱く傷つき易くするものではないか。人は全てを忘れて一心に打ち込む時にのみ強くなれるのではないか。思い出はその邪魔になっても益するところ薄いもののようである。

ただ、食べ物の思い出というのはどれこれも無駄にはならないといつも思う。いつも苦境に陥った時(それは得てして中国で発生する)に「参ったな、ここで死んだら大阪に帰ってきぬやのうどんが食えなくなるじゃないか」とか「ペコリーノ・ロマーノを食ったのはあれが最後ってことになるのか・・・」とか「こんなことになるんなら、あの時香港の龍門大酒楼の早茶にいっときゃよかった」とか考えてしまう。そういう食べ物の思い出は私に何の見返りも求めずに、今にも折れてしまいそうな私の華奢な心を一途に支え続けてくれているように思う。

私が今後どんな面倒ごとに巻き込まれても、苦しくても悲しくても辛くても、2008年11月~12月の冷蔵庫いっぱいの柿と白ワインは、いつまでも自分に静かな応援を送ってくれているような気がする。とにかく、柿をくださったみなさんに感謝です。ありがとうございました。

柿の里 ふるさとが実る頃

著者/訳者:西村 豊 (文・写真)

出版社:講談社( 2008-10-22 )

定価:¥ 1,785

Amazon価格:¥ 1,785

単行本 ( 128 ページ )


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