2009.02.28
電卓を持たない人は金持ちになれない?
香港に居た頃、複数の香港人からそういう話を聞いた事がある。
「でも、今はケータイに電卓機能がついているではないですか?
だったらみんな金持ちになれるんじゃないですか?」
「あれはねぇ・・・やっぱりダメだね。ちゃんと電卓だけのヤツもってなきゃ」
実際のところ香港で周囲を見回して見ると、きちんとした電卓を持っている人はお金持ちになっている。もしくは、お金持ちか、それ相当の地位にある人というのはちゃんと電卓を持っているものなのである。
この話を香港人T君に聞いてみると「ああ、そうだとは思うけど、いちいち電卓持ち歩くのも大変でしょ。ケータイに電卓機能があるし、今はケータイ持たないで外出することは絶対ないんだから、ケータイで充分だよ」・・・というのである。
彼はケータイの電卓機能を積極的に使う男で、彼と話しているといつも電卓で計算を交えながら具体的な数字を挙げてくる(実のところ香港にはこういうタイプの人間は多い)。但し、彼をお金持ちと呼ぶのは難しい・・・というより彼は全くお金持ちではなかった。
自分の香港での見聞を整理して並べてみると次のようになるだろう。
1)お金持ち(社長、個人事業主)・・・常に電卓を持っている。オフィスにはもちろん大きな電卓を(複数用意していることもある)、外出時はコンパクトな電卓を。もしくは中クラス(上の写真左のものくらいのサイズ)の電卓をカバンに入れていつも持ち歩いている人も珍しくない。
2)小金持ち(会社役員、個人事業主)・・・オフィスに中クラスの電卓を置いている。外ではコンパクトサイズの電卓かケータイを使う。
3)普通の人・・・オフィスではPCの電卓を、外ではケータイの計算機能を使っている。
もちろん幾つかの例外はある。普通の人でも仕事が経理であれば電卓を持っている。レストラン経営で成功している友人がいたが、彼は天才タイプの人で、オフィスは持たず、いつも外を走り回っており、計算はケータイだけだった。でも基本的に計算を重視しており、何かにつけてはケータイを取り出して計算ばかりしていた。いずれにせよ香港人は事にあたって具体的に計算するのを全く疎かにしない人たちなのである。
1)の人たちが大きな電卓を好んで使用する理由とPCの電卓機能を使わない理由を尋ねてみたら、「オフィスで誰かと打ち合わせとか商談をしている時に、大きな電卓だと相手に数字を見せやすいから」との答えであった・・・なるほどね。
私の場合、仕事中は常にPCから離れないし、計算の結果をPC上でまた使うのだから、やはりPCの電卓機能を使ってコピー&ペーストをする方が楽であった。そのため、キーボードショートカットで電卓を呼び出せるようにして、すぐに呼び出せるようにしていた。一時期USBテンキー電卓を使ったこともあるが、どうもあれは値段の割には使いづらいのである。
外出中はパームを使っていた。驚くなかれ、私はいまだにパームを使い続けているのである。1998年から2006年前までIBM Wrokpadを使い続け、以後はPalmM515を使っている。あれの電卓機能は結構良い。ただ、やはり雑に扱えないというのはちょっとつらい。それとやはりタッチパネル&スタイラスで多くの計算をこなすのは面倒なのである。
というわけで、やはりちゃんとした電卓を買わなければならない・・・という結論に達したのである。

(よく見るとこの電卓はエヴァンゲリオン初号機のカラーリングである・・・)
色々悩んで、店頭で試した結果、室内用はカシオのMW-10Aに決定した。もっと大きいのが良かったのだが、私の小さな机の上ではこれくらいがちょうど良い。値段もこなれているし、使いやすい。それと税抜き・税込みの計算機能がついていてこれがなかなか便利なのである。
外出時に持ち歩くのはカシオのSL-650Aにした。これだとワイシャツのポケットに入れていても全然かさ張らない。つくりもしっかりしているし、キータッチも良い。太陽電池もついているし、内蔵電池もあるらしい。税込・税抜機能もついている。使うかどうかは知らないけれど為替計算に使う「レート」ボタンもついている。ただ、何度か試してみたものの、この使い方がよくわからないのだが・・・。
このようにして、何処でも必ず電卓があるという状況が確保できた。寝る時は枕元にMW-10Aを置いて寝る。眠りにつく前とか、寝ている最中とか、寝起きの時に「あれは・・・計算したら幾らになるんだろう?」という時に電卓を叩くことにしている。どんなつまらないことでも、一応電卓を使って計算するようにしている。これでわかってくるのは、人間の数字の把握能力とか計算能力いうのはとてもいい加減なものであって、「大体1割くらい」とか「5%くらいじゃないの?」とか「総額で10万くらいかな?」とか思っているんだけれど、実際に計算してみればその数字がほとんど合わないということが多いことに気付く。
暇つぶしに、今自分が欲しいもの、というのを全部書き出して計算してみたら50万円にしかならなかった。おっ!ってことは簡単じゃないか・・・と思ったが、50万円もあれば当座の自分の物欲の全てが実現してしまうことに、ちょっとがっかりもした。結構私は単純で安物の人間なのである。
表題の件に戻るが、これは果たして真理なのか迷信なのかと問われれば、やはりこれは迷信よりも真理に属するものであると判断せざるを得ない。電卓を持っていればお金持ちになれる・・・という類の「幸運のお守り」的なものではない。お金持ちになる人というのは、より具体的に厳しい現実と真剣に格闘する人たちであり、そういう人は数字を明確にすることを疎かにしない。正確な数字を基に考え、その考えを基に投資をしたり、人を使う。そのための手近なツールとして、電卓に勝るものはないということなのだろう。
このブログは自転車のブログであるので、自転車の世界に置き換えてみれば、サイコンというものがある。今日はたくさん走ったな・・・とか、今週はものすごく走ったような気がする・・・と思っていても、サイコンを見てみれば大したことがなかった・・・というのはよくあることなのである。「計測なくして向上なし」という言葉を他の人の自転車ブログで見たことがあるけれど、これは真理であろう。人間というのはとても感性的で、情緒的で、いいかげんなものであって、自分がよくやった、たくさんやった、がんばった、疲れた疲れた・・・と思っていても、実際に計測してみたら普段とそんなに変わってない・・・ということはけっこう多いのだ。
電卓を常にそばに置いて、何でもかんでも計算するようになってから、丁度一ヶ月くらいになったのだけれど、この一ヶ月の間に、覚えているだけでも2回「おっ、そうだったのか!」ということがあった。一つは、「大体20%くらい」と思っていたことが実際は12.5%だったということ・・・これは大きな差である。もう一つは「大体総額50万~60万円くらい」と思っていたことが実際に計算してみたら100万円近かったということである(!)。
「12.5%」の方は「甘めに計算していました」というのが原因であった。
「100万円近かった」の方は、具体的に電卓を叩き始めると、具体的に「あれも必要だし、これも必要なんじゃないか?」と今まで認識していなかったものがどんどん見えてきて、それを積算すると100万円近くになったのだった。つまり感覚的にとらえていた目立った必要経費が総計60万円程度というのは間違っていなかったけれど、「たいしたことはないだろう」と思っていた小さな経費を具体的に積算すると30何万円にもなったのである。つまりこの場合、電卓は計算のツールという以上に、具体的にプロジェクトを視るためのツールになったのである。
「それにはこれも必要だし、あれも要るし、こんな経費だってあるんだぜ」といって、昼間の火鍋屋で飲茶をしている時にケータイの計算機能を使って、具体的な数字を見せてくれるのがT君の得意技であった。
「ほれほれ、そんなに甘いわけないじゃん(笑)」
なるほど・・・でもお前はちゃんとした電卓を持ってないし、今でも金持ちじゃないじゃないか。「今に見てろよ!」・・・と、電卓を片手に西の空を(香港の方角)を睨みつけ、不敵な笑みを浮かべる私なのであった(笑)。
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