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2009.02.26

【光生館】基準中日辞典増訂版(香坂順一・太田辰夫共著)

書棚を整理していたら、古い辞書が出て来た。

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中国語を学び始めた頃に使っていた辞書だ。

これの他に、岩波の中国語辞典小学館の中日辞典と日中辞典、愛知大学の中日大辞典を使っていたが、最も使い込んだのはこの光生館の中日辞典である。小さく軽く、しっかりしたカバーがついていて何かと重宝した。何処にでも持っていった。中国留学の時も、旅行する時もこれを持って行った。歴戦を共にした戦友のような辞典である。

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実はこのカバーは二代目で、一代目はボロボロになったので、光生館に連絡して新しいのを送ってもらった。電話でその旨を告げると光生館の担当者は感激して「御代は要りません」といってタダで送ってくれた。90年代初め頃の事で、今思えば良い時代であったと思うが、光生館も素晴らしい出版社であったと思う。光生館さん、その節はどうもありがとうございました(笑)。

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再度タダで送ってもらうのも悪いので、以後はテープとホッチキスで補強して使うことにした。そのため外観はこんな格好になってしまったのである。

この補強の仕方にはコツがあって、あまりキツキツにならないように敢えて緩めにしている。こうするとカバーを持って軽く振ると辞書を素早く抜く事が出来る。つまり辞書の「早撃ち」が出来るわけで、辞書を引こうと思ってから、必要な単語を見つける迄の時間を劇的に短縮することが出来るのだ。

結局のところ、この小さな辞書で日常的に調べる単語の6割くらいはカバー出来てしまう。重い辞書を使うよりも、この軽い辞書の方が検索時間を大幅に短縮出来る。毎回愛知大学の辞書を使っていては手首を傷めそうだし、肩もこるであろう。毎日学校に持っていくのも大変である(それでも同級生のMは毎日加古川からあの大きな辞典を持ってきていたが・・・)。それに重くて大きい辞書というのは小さいのに比べて頑丈ではない。あの薄い紙を破れないようにしてめくるのは結構気を使う。光生館の紙は程よく厚めになっていて、乱雑に扱っても破れる事はまず有り得ない。

光生館は使い込んでいる内に「たぶんこの単語はこの光生館の辞書にはないな・・・」という見当がつくようになってくる。となれば小学館に出番がまわる。それでも無ければ愛知大学のご出陣である。ただ、愛知大学の出番はさほど多くなかった。3日に1回くらいの割合であり、あんなものは毎日持ち歩くわけにはいかないので(1.4kgもあるのだ。ちなみに光生館は205gである)、家の机の上に待機させておき、学校に持っていくのは光生館と小学館の方であった。たとえるなら光生館は拳銃であり(ブローニングM1910ベレッタM1934だろうか)、小学館は小銃であり(モーゼルKar98Kあたりかな?)、愛知大学はバズーカ砲(それは言いすぎか・・・敢えて言うならブローニング自動小銃くらいに相当するのであろう)みたいなものであった。光生館は常に我が身のそばにあって、必要な時に素早くさっと抜いてパパッと判らない単語をやっつけてくれる。そういう辞書だったのである。

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で、これが中身である。ビニールの表紙でしっかりしている。毎日親のカタキのようにひきまくったけれど、ビニールの表紙は少ししわが寄っただけで、今も健在である。

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ピンインの各アルファベットごとに、インデックスを取り付けてカスタマイズしている。ちゃんとフィルムコーティングもついている。私の辞書は全てこのようにしている。これをつけておくと頭出しが早いだけではなくて、ケツ出しも早いので、慣れると探したい音がどのあたりにあるのかがすぐわかるようになる。正直なところ、電子辞書よりも検索スピードは速い。電子辞書で小さなキーボードを打ってピンインを入力して・・・とやってるのは結構時間が掛かるものなのである。

それと、ビニール表紙の弾力性と、このインデックスを上手く使うと、この辞書は片手で引けるのである(!)。なので、右手でペンを持って、左手で辞書を引く、という動作が可能になるのだ。こういう利便性はもう電子辞書の及ぶところではない。

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インデックスと紙の接合部分にはメンディングテープを貼って、インデックスをめくる際の力で、紙が破れないように補強している。

一度調べた単語は蛍光マーカーを引いておく。そうすると次に同じ単語を引いた時に「あ、前に引いたのに覚えてなかった」と分かるわけだ。長く使っていると「馴染みの顔」が増えてくる。この単語はあの時に使ったな・・・とか、この単語は苦手だったなぁ、とか。授業で出てきたけど、中国に行って一度も使わなかったのも結構ある。十数年たってから昔引いた単語を眺めていると同級生と再会したような懐かしい気がしてくる。

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当時私はアップルユーザーだったので(しかもApple//c!)、こんなシールを貼っていた。18年前の私は結構かわいい奴ではないか(笑)。この辞書は1962年に第一刷が出て、私の持っているのは1991年の第三十刷である。ただ、内容的には第一刷の頃とあんまり変わらないみたいで、簡体字が1991年当時のものと一緒にはなっていない。1962年というのはまだ簡体字が完全普及していない頃なので、古い字体も混ざっている。例えば「隸キ」の「青」は「靑」である。私はこの字体で覚えてしまった為、一度テストで点を引かれたことがあった。「私の辞書にはこの字体で書いてありますよ」と先生に抗議すると、「そんな古い辞書を使うのは辞めなさい」と怒られた。ただその時すでにこの辞書は私のかけがえの無い相棒に成っていたので敢えて使い続けた。

留学にも持っていって、いつもリュックサックの中にはこの辞書があった。街中でわからない単語に困らされるとこれを引く。一度旅行中に船の切符を巡って船員と口喧嘩になり(間違って違う船の切符を売りつけられていたのだが、それを知らずに乗船していたのである)、その時にこの「相棒」をさっと取り出して、辞書を引きながら応戦していたら、あっという間に人だかりが出来て、私を取り囲んだ中国人に「おいっ!この日本人ったら辞書引きながら口論してるぜ!」とえらく感心されてしまった(笑)。すると、人だかりの熱気に押されて、船員の方から折れて引いてくれた。この小さな辞書に意外ところで助けていただいたのである。

・・・というわけで、とてもお世話になった光生館の中日辞典だが、唯一の欠点を挙げるとすれば、光生館がこれと同じ大きさの日中辞典を出さなかったことであろう。それだけが悔やまれてならなかった。もし同じ大きさ、同じ材質の日中辞典があったなら、友人Kに革の専用ホルスターを作ってもらって(Kは革細工が出来るのである)、二丁拳銃ならぬ二冊辞書で、中国語界のチョウ・ヨンファになれたのに・・・。この点、電子辞書は一つで中日も日中も入っているから「二丁」にする意味が無い・・・という致命的なデメリットを持つので面白くない。全く残念なのである。

http://www.47news.jp/CN/200307/CN2003072301000319.html

http://www.kobe-cufs.ac.jp/library/ja/tenji/tenji01/tenji01_a.pdf

調べてみると、編纂者の香坂順一先生は2003年7月22日に88歳で亡くなられている。太田辰夫先生は1999年1月に亡くなられている。二人とも私が中国語を学び始める前に退職されているので、私が学び始めた後で、この二人が日中辞典を編纂することはなかったであろう。この辞書には本当にお世話になったので、今でも心から感謝している。こんなことなら亡くなられる前にお礼状の一つでも送っておくべきであった。重ね重ね遺憾に思う。

東京で勤めていた時は、仕事で中国語を使うことはなかったが、それでも中国語との縁は完全には切れなかったので、当時出たばかりの8センチCD-ROMの電子辞書と一緒に光生館を併用した。8センチCD-ROMの電子辞書はかさ張る上に、衝撃に弱く、起動時間やリードタイムが長かった。なのでやはり光生館との縁も切れなかったのである。

2003年に香港へ移住する時に、少し悩んだのだがこの辞書は持っていかなかった。当時は既に電子辞書が(しかもROMタイプの)普及しており、中国語を引くだけにおいては光生館の方が早かったものの、電子辞書は他に英和・和英・国語・漢和辞典なども入っていて荷物の軽量化が出来たので、電子辞書を選んで、光生館には留守番してもらうことにしたのである。

今回、書棚を整理している時に再び手にしたので、たぶん6年ぶりの再会となるのだが、やはりこの辞書は私の手に良く合う。PCのそばにおいていて邪魔にならないし、検索も早い。これで辞書を引くと、よく頭に入るみたいである。

今から中国語を勉強を始める人は、紙の辞書なんかたぶん使わないのだろうけれど、それを思うと今の人がうらやましいと思う反面、少しかわいそうにも思う。電子辞書にはこれだけの愛着を持つことはできない。辞書に愛着を持っても語学力の向上には全く関係ないといえばそうで、私は玩物喪志の度が過ぎる人間だとは思うものの、辞書への愛というのは、他の愛に比べて長続きもするし、比較的報われる愛でもある。良い辞書は一生の友に成り得る、とつくづく思うのである。

基準中日辞典 増訂版

著者/訳者:香坂 順一 太田 辰夫

出版社:光生館( 1966-02 )

定価:¥ 1,848

Amazon価格:¥ 1,848

大型本 ( 386 ページ )


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