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2009.03.31

まんばのけんちゃん

「まんばのけんちゃん」と書くと、一体それは何処の誰なのか?と思われるかもしれないが、これは料理の名前である。

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↑これ・・・らしい。「らしい」というのは、私にも実はよくわかっていないからである。

去年、台湾屋台料理「ペイペイ」で讃岐出身の人に会った。私も父母は讃岐の人なので、興味を持ってあれこれ聞いてみたのだが、どうも讃岐には「まんば」という美味しいものがあり、「まんばのけんちゃん」なる料理があるらしい。私は定住した事はないものの、度々讃岐には帰省したので、大体讃岐の料理のことは分かっているつもりであったが、「まんば」のことも「けんちゃん」のことも判っていなかった。不覚である。

以来あちこちで「まんば、まんば、まんば、まんば、まんばのけんちゃん、まんばのけんちゃん、まんばのけんちゃん、まんばのけんちゃん!」と連呼していたら、先週まんばのけんちゃんの方から我が家にやってきた。やはり欲しいものは欲しいといっておくものである。

ググって見ると(我がブログはグーグルとウィキペディアの多大なる協力の下に出来ていると最近つくづく思う)、「まんば」とは高菜の一種であるらしい。

まんばのけんちゃん(ウィキペディア)

まんばのけんちゃん(まんばのけんちん)は香川県の郷土料理である。場所によっては単に「まんばの炊いたん」と言われることも。

高菜の仲間であるマンバ(場所によりヒャッカとも言う)を煮こぼした後、およそ一日水にさらして十分アクを抜いたものに、豆腐・油揚げ・天ぷら(練り物)・いりこ等を入れて煮びたしにしたものである。醤油味。

上の写真のそれは豆腐・天ぷら・いりこは入ってないものの、一応油揚げは入っているし、味もしょうゆ味であった。

「けんちゃん」はしっぽく料理の「けんちん」が訛ったものらしい。ただ、さらに調べてみると

けんちん汁(ウィキペディア)

建長寺の修行僧が作っていたため、「建長汁」がなまって「けんちん汁」になった説と普茶料理の巻繊(ケンチェン-モヤシを胡麻油で炒め、塩・醤油で、味付けした物)がなまり、けんちんになった説がある[要出典]。ただし、建長ではなく巻繊と、難しい字があてられたことが不可解であるため、前者の説はやや有力ではない。

「巻繊」は現代中国語の発音では「JuanXian」である。「繊」は手元の漢和辞典では「セン」の一種類の読みしか出てこない。「巻繊」を「ケンチェン」と読むのは一体何処の発音なのであろうか。

「モヤシを胡麻油で炒め、塩・醤油で、味付けした物」とは、現代中国で言うところの「炒豆芽」のことである。精進料理はもったいぶった言い方をするのが好きなので(それは中国料理全般に言えることかも知れないが)「巻繊」と呼ぶのかもしれない。たしかに炒めたモヤシは巻き上がった繊維のようにも見えなくも無い。もしくは「繊」という漢字を使う法衣か、仏具があってそれがモヤシに似ているのか。

「建長」説の方はわかりやすい。発音は「JianChang」である。「建」は音読みで「ケン」なのだから鎌倉時代の中国語では「ケン」と読んだかもしれない。建長説から見ると「けんちん」の方が訛っているのであって、正しい発音は「けんちゃん」なのだろう。

色々調べていると、また面白いものを見つけた。もうどんどんエスカレートしそうだ。

都府県料理-作り方から探る(しょくたん)

↑このままでは読みにくいので、こちらで改行・分類してみた。

建長汁(神奈川)
おけんちん(神奈川)
けんちん汁(神奈川)
斉菜(チヤイツアイ)(神奈川)
けんちん汁(茨城)
けんちん汁(宮城)
けんちん汁(群馬)
けんちん汁(埼玉)
けんちん汁(山形)
けんちん汁(新潟)
けんちん汁(青森)
けんちん汁(千葉)
けんちん汁(東京)
けんちん(栃木)
けんちん汁(栃木)
けんちん汁(富山)
そばのけんちん汁(福島)
どじょうのけんちん汁(栃木)
けんちん汁(岐阜)


おけんちゃん(山梨)
けんちゃん(山梨)
けんちゃん汁(岡山)
けんちゃん汁(大分)
けんちゃん汁(鳥取)
けんちゃん(徳島)
けんちゃん(兵庫)
けんちゃん汁(和歌山)


いもきり(大分)
けんち(滋賀)
けの汁(青森)

このようにしてみると、やはり建長寺のある神奈川県にその発音のバリエーションが多く、東の方はほとんど「けんちん」である。山梨だけが神奈川に近いにも関わらず関東で]只一つの「けんちゃん」である。山梨を除いて「けんちゃん」発音地域はほとんど西国の方になる。

一つ注目したいのは神奈川県のバリエーションの一つに「斉菜(チヤイツアイ)」というのがあることだ。「斉菜」とは精進料理のことである。現代中国語では「素菜(SuCai)」という。「素」よりも「斉」の方がずっと高級な印象がする。

取り留めないので話は「まんばのけんちゃん」に戻るが、「まんばのけんちゃん」の方にはいりこも入れば天ぷらも入るので、これは斉菜に当たらない。たぶん、讃岐に到ってローカライズされてしまったのだろうか。もしくは、「けんちゃん」という言葉の持つ「斉菜」としての意味が失われて(「けんちゃん」という言葉そのものには「斉菜」を意味するところは一切含まれていないのだから)、単に調理法(油で炒めてから汁にする・・・「まんばのけんちゃん」の場合は煮びたしであるが)を差すようになったのではないだろうか。

このように考えてみると「まんばのけんちゃん」は大陸由来の料理である。以前トルファンで食べたラグメンの麺が、讃岐の「中村」のうどんとほぼ一緒(細さ、コシ、食感など)であったことに、強力な衝撃を受けたことがあったのだが(たぶんルーツとして近いものを持っているのであろう)、今度上海に戻って、素菜料理店に行けば「けんちん汁」か「まんばのけんちゃん」の原型に出会えるかも知れない。そんなことを考えつつ、夜中に突然訪れた「まんばのけんちゃん」を食べながら、大いに興奮したのであった。

建長寺と鎌倉の精進料理―七百五十年受け継がれた建長けんちん汁の精神を家庭で活かす

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