« | »

2009.05.05

【大阪渡船大全】千本松渡@木津川

「天橋立、三保の松原」転じて「ブレードランナー」へと窯変す

木津川渡を渡り終えて、対岸の平林から次の千本松渡まで行く道はとても寂しい。人気も少ないし、工場だか倉庫みたいなのばかりで、たまに野良犬だか飼い犬だかわからない、汚れた雑種の犬とすれ違う。すれ違う犬はこちらに警戒しつつ、無愛想ながらも不可解そうな表情を浮かべてこちらを見ている。犬も私のことを何処から来た野良かと訝しがっているのであろう。

dsc00948

千本松大橋もこのようなぐるぐる巻きの橋である。対岸側もぐるぐる巻きなので、地図の上で見ると眼鏡のように見えるから、眼鏡橋とも呼ばれる・・・といおうか、私が高校生の時分に周囲はみなそう呼んでいたし、私もそう呼んでいた。千本松渡はこのたもとにある。

dsc00949

自転車がたくさん並んでいる。

dsc00950

自転車保管所である。そこを少し進むと、

dsc00951

こういう道が見える。その先へ進むと・・・

dsc00954

このような風景が現れる。新木津川大橋は日本最大のアーチ橋で立派なものだが、どことなく可愛げに欠けて人を怖気させるところがある。千本松大橋の方は両端がぐるぐる巻きで、真ん中はアーチではなく、こんな風に真っ直ぐと伸びている。こちらの方も威厳は負けていないがどことなく美しさと可愛げと親しさがある。映画「ブラックレイン」のオープニングの空撮で出てくるのはこの橋である。あの映画を見ていると、大阪はオープニングから中盤までは、まるで「ブレードランナー」的な未来都市みたいで(監督が一緒なのである)、中盤以後はまるで香港みたいになってきて(変な漢字の看板が出て来る)、工場のシーンでは中国のようになって(やたらとみんな自転車に乗っている)、最後の決戦は越南か雲南の農村みたいな場所で行う。東京の師匠は西洋人の眼は青いので、白を見てもあいつらには青く見えるけど、それがあいつらにとっての白なんだ・・・だから日本人とは色彩感覚が違う、と言っていたけれど、「ブラックレイン」を見てみると、白が青に見えてるのかも知れないのはさておき、とりあえず西洋人の眼に大阪は多くの偏見を含んで映っているのがわかった。それは演出の為かも知れないが、とにかくああいう味付けにしないとと西洋人に大阪を咀嚼させ消化させることはできないのであろう。ただそういう中で、千本松大橋と周囲の工場は、そのまま空撮にするだけで「ブレードランナー」的な大阪を充分に表現できていた。リドリー・スコットのお眼鏡にもかなったという点で、やはり千本松大橋は偉大なのであるが、この橋がかようなる特殊な形状であるのは他でもない、大正区の持つ濃厚な渡船性が故なのである。

dsc02803

以下、書き出してみる。

千本松渡船場

このあたりは木津川の川尻に近く、江戸時代には「北前船」をはじめ諸国の船が盛んに出入りしました。幕府は舟運の安全のため、大阪市章のもとになった「澪標」(みおつくし)を数多く設置すると共に、防波堤として、天保3年(1832年)には長さ1.58kmに及ぶ大規模な石の堤が築かれました。
千本松の名の由来は、この堤防に植えられた松並木によっていて「摂津名所図会大成」に「洋々たる蒼海に築出せし松原の風景は彼の名に高き天橋立、三保の松原なども外ならずと覚ゆ・・・」とあります。
昭和48年(1973年)に千本松大橋が完成しましたが、現在も渡船は通勤通学の貴重な交通手段として、大正区南恩加島1丁目と西成区南津守2丁目を結び(岸壁間230m)運航されています。
大正区側の「南恩加島」の町名は文政12年(1829年)に開発された「南恩加島新田」に由来しています。

リドリー・スコットによって「ブレードランナー」的大阪のイメージを負わせさせられた千本松大橋のあるこの土地は、かつて「洋々たる蒼海に築出せし松原の風景は彼の名に高き天橋立、三保の松原なども外ならずと覚ゆ・・・」と称された松の名所なのであった。

dsc00955

千本松渡は木津川渡に継ぐ岸壁間距離を有するが、こちらは人の往来が多いため、渡船の本数も多く、安心して利用できると思う。夕方のここの景色は本当に美しいと思う。千本の松は既にないが、大きな橋がその光景を引き立ててくれている。大正区の渡船を手っ取り早く、且つ深く堪能したいという人には必ずお勧めしたいと思う渡船場である。残る渡船はあと二つ。その前に丁度良いところまで来たので、ちょっと寄り道をしようと思う。続きは次回の講釈を待たれよ。

大阪名所むかし案内―絵とき「摂津名所図会」

著者/訳者:本渡 章

出版社:創元社( 2006-08 )

定価:¥ 1,890

Amazon価格:¥ 1,890

単行本 ( 254 ページ )


トラックバック URL

コメント & トラックバック

現在コメントはありません。

Comment feed

コメント入力